神奈川県高等学校教科研究会 情報部会 研究会

新年明けました。

今年ほど年を越したという感覚が乏しいのは初めてですね。震災の影響か、はたまた年を食ったのか…。

ともあれ、今日は表題の研究会に行って参りました。

神奈川県高等学校教科研究会 情報部会「情報の授業・実践事例報告会」

神奈川県の情報の先生方は、横浜清陵総合高校の五十嵐先生を中心に、とても熱心に活動をしていらっしゃって、毎年この日に行われるこの研究会の授業実践の報告は総じてレベルが高くてオモシロイ(興味深い、という意味で)。

今回はほとんどが生徒が手を動かして、あるいは話し合いをして学ぶ形態の授業実践の報告が占めて、改めて体験重視の帰納的な指導法が情報科で重宝されているのかが良く分かりました。

帰納的な指導法自体は、否定するべきではないし、経験と対話で理解が深まることは多いと自分も考えますが、一方で、その活動のカタチにだけ目を向けるのは良くないかなとも思いました(あまりに多すぎたせいもあるかもしれません(笑))。

情報という教科の場合、多くの熟練した先生方は、一足早く「教え込み型」から「学習支援者型」への脱皮を図っているという印象も受けました。自分が言葉で伝えて教え込むよりも、何かの活動を体験させて、あるいは実習や実験をさせて、そこに気がつくことを生徒たち自身に考えさせるというやり方を一生懸命考えていらっしゃる。

でも本当に大切なのは、活動の体験や実習・実験の手続きではなく、その後に行われる教師の働きかけです(もちろん、発問というカタチだったり、ワークシートへの記入だったりといろいろな形態はあるが、生徒自身が考えるというやり方が普通でしょう)。しかし、多くの発表では活動のカタチに焦点があたって説明がされているように思われました。

生徒が主体的に取り組む学習活動自体は、否定されるべきことではないのですが、でも、そこで教師がやっていることは、本質的には”何をするか”のデザインではなく、”何を考えるのか”のデザインであるべきです。そこで子どもたちがどのような思考を働かせて、どのように学びを深めるかをデザインすることこそが教師の仕事として重要で、そのためにどのような働きかけを教師がしているのかということこそが、こうした場で共有するべきtipsとして大切なのではないかな、と思いました。

もちろん発表された先生方の中には、そうしたことにも十分配慮した授業実践を、detailまで報告してくださった方もいらっしゃって、そうした発表にはすごく感心しました。中には、とてもchallengingな取り組みをして、大きな課題にぶち当たっていることをほとんど正直に報告されている方もいらっしゃいました。実践じたいは、やってみないと分からないという部分は多分にあるので、それ自体は大きな学びです。しかし、生徒が行う作業の手続き的知識のノウハウだけでなく、その後どのように学びに発展させていくかというところをしっかりと共有することに、こうした研究会の意義があるように思いました。

というのも、生徒に主体的に活動から帰納的に考えてもらったとしても、その本質に気づいてもらわないと、単に「楽しかった!」というだけで終わってしまう。しかし、体験した活動を俯瞰して(振り返って)、もっとメタ的に考えられれば、他の場面での転移にもつながります。そうした授業デザインが、様々な場面で活用可能な判断・思考の力を育てていくと思います(詳しい理論的な解説は、またの機会に…)。そういう意味で、情報科の生徒主体の学習活動のデザインというのは難しく、challengingことだなぁ、と改めて思ったけれども、逆に、そうした活動のデザインを試行錯誤しやすい(ある意味challengingで楽しい)仕事でもあるとも思いました。

翻って自分の現場を考えると、ともすると、学生さんたちはchallengeをせずに、安全な授業実践を試みがちかもしれません。もちろん、授業の初心者は王道を経験して熟練して初めて何とか教壇に立てるという部分もあると思います。しかし、仕事をし始める前に、何事も「事なかれ主義」でマニュアルのような授業をするような教師を育てることは、未来の教師像とは大きく矛盾します。

私の教員養成での仕事の1つは、しっかりと授業をする力を身につけつつも、いろいろなchallengeをしてみようと思う学生を育成するということなのかもしれないなぁ、と思いました。