協調学習(グループワーク)における能動的で平等な参加は、コラボレーションの調整において重要な要素です(Isohätälä et al., 2019)。協調学習の研究において、このような調整を改善するためのアプローチは、ソフトウェアやエージェントからプロンプトやスクリプトを提供し、グループメンバーの活動を調整したり誘導したりすることである(例えば、Borge et al., 2018;Vogel, et al., 2016などにレビューがあります)。会話エージェントは、コンピュータを介したディスカッションの促し(プロンプト)やスクリプトの生成で広く使用されており、先行研究では、協調学習をサポートするためのさまざまな有効性が示されています(例えば、Dyke et al., 2013)。

ロボットやバーチャルエージェントのようなソーシャルエージェントは、通常、対面での協調学習を調整するために適用されることが期待されます(Okita & Clarke, 2021)。このようなソーシャルエージェントは、教師が行う場合よりも少ない権限で適切なフィードバックを提供することで、学習者間の対話によるインタラクティブな学習を支援するとともに、学習者がそのようなスクリプトを学習プロセスにおいて意識し、内面化することができると期待されます。このように、ソーシャルエージェントは、学習者が教室や少人数グループでの学習を楽しめるように支援する「学習の仲間(learning peer)」として学習者と協調することで、学習者が学習プロセスに参加し、議論への適切な参加を維持することが期待されています(Miyake & Okita, 2012)。

Ochibiは、3次元のホログラムで表示されるアニメーションのエージェントで、参加者の発話量や、参加者間の発話のバランスに応じて、メンバーに対して促しを行います。Ochibi自体はAIのような高度な判断を行ったり、自ら適切と思われる発言をすることはありません。しかし参加者がその促しを聞いて話し合いを進めることで、参加者間の参加度の均衡が生まれることが明らかになっています(西村ほか 2004)。また、エージェントと参加者の間でどのように関係性を構築しているのか、ということについて分析をしています(Mochizuki, et al. 2023)。ピアラーニングに関する文献では、関係の質がピアラーニングの質に影響を与えることが確認されているにもかかわらず、エージェントと学習者の間の関係構築は、CSCLではほとんど考慮されてきませんでした(Riese et al., 2011)。学習者がエージェントをどのように認識し、どのようにエージェントとの関係を構築するかを調査する研究も行っています。

この研究は、電気通信大学・江木啓訓先生、岡山県立大学・石井裕先生、放送大学・加藤浩先生、玉川大学・久保田善彦先生との共同研究です。

Recent Publications

西村龍之介, 居原田梨佐, 菅本祐也, 石井 裕, 望月俊男, 江木啓訓 (2024) 議論における発話の偏りに基づいて参加の均等化を促す議論支援システム.情報処理学会論文誌,65(1),197-210

Mochizuki, T., Egi, H., Ishii, Y., Yuki, N., Kubota, Y., Kato, H., & Takeuchi, M. A. (2023) Investigating Relationship Development Processes between 3D Conversational Agents and Learners in Collaborative Discussions. In Damșa, C., Borge, M., Koh, E., & Worsley, M. (Eds.), Proceedings of the 16th International Conference on Computer-Supported Collaborative Learning – CSCL 2023 (pp. 201-204). International Society of the Learning Sciences.