ワークショップ「ポスト真実の世界における児童生徒・学生の思考力向上:認識的認知の成長」のアーカイブを公開しました!

 ポスト真実時代において、さまざまな情報が流通する中で、どのように統合的に理解すれば良いか、そしてどのようにその学びの環境を提供するかに関して、認識的認知(epistemic cognition)という領域の研究が広がっています。2020年9月に、Clark A. Chinn先生(ラトガース大学)をお招きして、認識的認知に関するワークショップを行いました!

 認識的認知とは、大まかに言えば、人々の知り方のことです。人々がどのようにして知識を理解し、どのように知ることを調整したり理解したりしているかを指します。学習科学や周辺分野(科学教育、歴史教育、情報リテラシー教育など)では、認識的認知への関心が高まっています。とくに、学習者の認識的成長(epistemic growth)を促すことに関心が集まっています(Barzilai & Chinn, 2018; Chinn, Barzilai, & Duncan, 2020)。認識的成長とは、21世紀に生きる市民が必要とするあらゆる知的なコンピテンシーを含む、人々の知り方の改善を指します。これらのコンピテンシーには、理解を深めるための証拠の使用、正当性のある議論の構築、多様な状況への知識の方法の理解と適応、他の人と一緒に知識を構築することが含まれます。情報バブル、フェイクニュース、様々な論争が横行するデジタル時代にあって、多様で矛盾する情報源に対して、児童生徒や学生がうまく推論するためには、認識的成長がきわめて重要です。

 このワークショップでは、Apt-AIRフレームワークを使って、児童生徒や学生の思考や推論を向上することを考えていきます。Apt-AIRフレームワークは、認識的教育の目標、すなわち、児童生徒や学生の知り方を改善する教育のゴールを規定しています(Barzilai & Chinn, 2018; Chinn, Rinehart, & Buckland, 2014)。私たちは、児童生徒や学生の思考の重要な特徴を同定し、彼らの思考がどのように改善されているかを分析したり、彼らの思考を改善するためのよりよい指導を設計するためのツールとして、このフレームワークをどのように使用できるかを示しています。

 このワークショップでは、とくにインターネットなどのデジタル情報源に基づく言説に特に注目して、人々が様々な知識や情報を使ってCOVID-19を捉えようとする様々な言説を題材に、認識的成長の改善点をどのように同定し、分析するかを、体験的に学びました。

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